ブルッフの『コル・ニドライ』6/23プログラム紹介

先日の日曜は同志社のチャリティコンサートがあり、

学内校の合同コーラスを指導していたりして実はまだちょっと

疲労気味なのですが、次の日曜はいよいよチャペルコンサートシリーズ2019の第一回の公演を迎えます。

 

今回はなんと、チェロ5本と!しかも素晴らしいプレーヤーの

方々との共演ということで、だいぶん緊張しています。

"希望への祈り"

~チェロアンサンブルとパイプオルガンの共演~

《プログラム》

『コル・ニドライ』 / マックス・ブルッフ

『祈り』op.158          / カミーユ・サン=サーンス

『交響曲第3番 "英雄" 』より第一楽章

          / ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン

 

『コル・ニドライ』はチェロ(ソロ)とオルガンの、他2曲は

チェロアンサンブルとオルガンの編曲になります。

「エロイカ(英雄)」は今回の為の特別編曲!

私自身オルガンでアンサンブルをする機会がとても少なくて、

今回は3階の位置に演奏台のあるオルガンと一階のチェロを、どう合わせるのか・・・・。どきどきです。

それにしてもチェロというのは私が大好きな楽器!

生まれ変わったらチェロが弾ける人になりたい。(ガンバも弾ける人になりたい。)

というくらいなのでチェロとの共演はとても楽しみです。しかも5本・・・!

さて、今回はプログラムの一部をここで事前に解説。日曜に向けてテンションを上げていこうと思います。

というのも、チェリストの上森さんとの間での初期のプログラム相談で、真っ先に決まったブルッフの

「コル・ニドライ」について紹介したいからです。


ブルッフの『コル・ニドライ』は、弦楽器ど素人の私にとっては当初「何?どういう意味?」というところから

入るという、恥ずかしながら馴染みのない言葉と馴染みのない作品だったのですが、

音楽愛好家として弦楽器を演奏する私の両親(素人です)なんかは

「なんだ、知らなかったの」という反応でございました。

一度聴いて、「ああ、このチェロが聴きたい!」と激しく思った作品。

一体どんな内容なのかと事前学習してみました。

 

まずはブルッフってどんな作曲家なのかというと、ブラームスと親友であったというだけあって、

ドイツロマン派のただ中を生き、作曲家・指揮者・教育者として活躍した人物でした。

 

ブルッフといえば「ヴァイオリン協奏曲」が有名で、バイオリンの魅力を存分に

引き出す名曲というイメージなのですが、久しぶりに聴きたくなって庄司紗矢香さんのソロと、

ブルッフの出身地ケルンが本拠地のWDR交響楽団による演奏が見つかったので、動画を貼ります。

庄司さん、素敵です。

19世紀後半のヨーロッパではブラームスの「ハンガリー舞曲」やドヴォルザークの「スラヴ舞曲集」などが

ヒットし、ブルッフも民族音楽的な題材の作品を書くことを出版社から要望されていました。

実際に彼は「スコットランド幻想曲」や「スウェーデン舞曲集」など、多くの評価の高い作品を

遺しています。

「コル・ニドライ」も、そうした民族音楽的題材をユダヤ音楽に求めて作曲されたものとされていますが、

実際のところはブルッフはもっと深いところでユダヤ音楽に霊感を得たのではないかと

私は想像しています。

「コル・ニドライ」の冒頭のチェロの旋律はユダヤ教における最大の祭日、「ヨム・キプル(贖罪の日)」で

歌われる典礼歌、「コル・ニドレイ」に由来しています。

ユダヤ教の会堂では器楽は俗なものとされ、基本的にアカペラが正統とされています。

上の動画で歌っている方の歌唱力もなかなかのものですが、こういう先唱をする人のことを

ハッザーン(カントル)と呼ぶそうです。

さて、まさにこの「コル・ニドレイ」の歌いだしでのように

ブルッフの「コル・ニドライ(コル・ニドレイをドイツ語読みしたもの)」は始まります。

何とも物悲しく、哀愁に満ちた旋律!

そもそも「コル・ニドレイ」が歌われる「ヨム・キプル」(贖罪の日)の意味を理解するには

ユダヤ教について基本的なことを知っておく必要があります。

ユダヤ=イスラエルはもともと非常に古い歴史を歩んできており、ユダヤ教の聖典が「旧約聖書」です。

旧約聖書の最初の五冊はモーセの律法と言われ、ここでは神とイスラエルの民との約束が綴られています。

ユダヤ教とは簡単に言うと、この律法を守る宗教ということができます。

(このあたりは私も詳しくないので、受け売りです。)

ところがキリスト以降の時代になって、ユダヤ教はその神殿をローマ軍によって破壊され、

それ以降自分たちの神殿を失ったままでいます。

つまり、ユダヤ教徒は神との約束を守れず、神殿を失ったままでいることに対する深い悔悟の念を

常に抱えている、ということになります。

「ヨム・キプル(贖罪の日)」が近付くとユダヤ教徒は断食(ただし、全く食べない訳ではないことが多い。

そして推測ですが、ユダヤ教徒が全員必ずするものではないかもしれません。)を

始め、「ヨム・キプル」には神様に罪の赦しを請う祈りと長い罪の懺悔が唱えられます。

そしてその「ヨム・キプル」の日の終わりが近付くと、いよいよ「コル・ニドレイ」の祈祷が

朗誦されるのだそうです。

(ここまで、複数のサイトからの情報を参考にしています。)

ただ、「贖罪」にはただ懺悔だけではなく、その後に「罪が赦される」という救済が待っているので、

つまり「コル・ニドライ」もまた、苦悩に満ちた懺悔の先に、赦しを得た心の平安を得る

ユダヤ教徒の姿が映し出されているのではないでしょうか。

この曲の動画では、やはりミッシャ・マイスキーの演奏がとても胸を打つものがあります。

ユダヤ人である彼の、作品や旋律に対する深い理解が表れている気がします。