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ヒンデミットのカノン

1月以来、「アーティスツ インタビュー」というものをやろうと思いたって

世界の一線で活躍される音楽家お二方にインタビューをさせて頂いた。

現在インタビューを文字に起こす作業を少しずつしているところだけど、対話を通してとても多くの刺激を頂いている。

 

年末に立ち上げたヴォーカルアンサンブル vocal plus のこれからの活動を考えつつ、ゆっくりプログラムを練っているところでもある。

アカペラの作品の開拓を少しずつ試みるさなか、偶然ヒンデミットのカノン集に巡り合った。

ヒンデミットは、作曲家の名前はまあまあ知られていそうであるが、作品の知名度はあまり高くない印象がある。

なんとなくナチスに排除された不遇の作曲家、というイメージを持っていて、オルガンの作品もあったように思うが演奏したことはない。

ヒンデミットのカノン集は開いてみると割と面白くて、なんでもヒンデミットが個人的にお付き合いのあった人の誕生日であったり、挨拶やプレゼントの替わりとして自作のカノンを贈ることが多かったようだ。

作曲年代を見ると、ドイツ生まれの彼がナチスを逃れてスイス、そしてアメリカへと亡命して以降のものがほとんどで、例えばストラヴィンスキーの75歳の誕生日に贈ったカノンの歌詞はドイツ語で「我々のイゴーリがいなかったら世界はどうなっていたんだろう?だから私たちは神様の賜物に感謝してコーラスで歌うんだ」となっていて、ソプラノが先行するメロディーを5度下、そしてその7度下のカノンで混声3部で歌うように作られている。

凝っていて、そして不思議に美しい。

ヒンデミットという人はおそらくかなりユーモアの豊かな人だったと見えて、カノンの楽譜に自筆のイラストを添えたりしてカードとして贈っていたらしい。

ヒンデミットの画才はかなりのもので、こちらのサイトではより詳細を知ることができる。

Drawings: Paul Hindemith

vocal plusのプログラムに入れるかは置いておいて、久々に良いものに出会えた気分になる。