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配信版オルガンコンサートを振りかえる

2021年が終わろうとしている。
振り返ると結構盛りだくさんな年だったけど、例にもれずあまり記録もできてなくて、折角年末になって饒舌になろうとしているのに少し惜しい気がして、何かを留めておきたいと思う。
今年、自分にとっての転機のようなものがいくつもあったような気がしている。
その一つが配信型のチャペルコンサート。

2020年度は全く何もなくシーズンを終えてしまったが、3学期に授業で高校生たちと「コロナ禍だからできることはないだろうか」と真剣に考えてみた。

思った以上にポジティヴなアイディアが沢山出て、それが力になって「チャペルコンサートも形を変えて必ずやる」と宣言した。

 

実を言うと自分の演奏を録音録画して配信することは、以前から興味はあってもとても勇気が出なかったのです。

「やろうかな」と思うと、それと同じほど自分が無価値なのでは、という思いに襲われ、結局それに負けてしまった。

でも2021はそうなこと言ってられない!

自分を後押ししてくれたのは、配信版コンサートゲスト出演について恐る恐る意向を尋ねてみたところ、快諾してくださった(スーパー)オルガニストの大平健介さん、それから低予算をものともせず(?)録音や録画編集を快く引き受けてくれたチーム岩倉の仲間たちだった。

それにしても、事前収録型の配信型コンサートは従来のコンサートと全く異なる。

客を入れずに演奏するという違いもあるが、「1回きり」のライブ演奏と違って収録型は撮り(録り)直しがきく。

というと収録の方が良さそうに聴こえるかもしれないが、僅かなことが演奏中やたらに気にかかってしまい、集中の持って行きどころがわからなくなってしまったり。

自分の未熟さを痛感することにもなったけど、表現の多様性を知った気がした。

また、配信版は演奏する内容もライブと異なる。従来は約1時間のプログラムで演奏していたが、

配信版では20分ほど短縮したプログラムで構成している。

すると何を演奏するか、どの作品を聞きどころに持っていくか、などが全く変わってしまうのだ。

今年夏に配信した私の1回目のコンサートは、1. アンリミュレの「バラ窓」、2. オリヴィエ・メシアンの「鳥たちと泉」、3.マルセル・デュプレの「行列と連祷」の3曲で構成し、何だか20世紀フランスの作品で美しくまとまってしまった。

納得のゆくプログラムではあったけど、おそらくあまり一般的ではない曲ばかりが並んだ。

でもそもそも、日本において一般的なオルガン作品ってどれほどあるのだろうか。

配信版では少なくとも、普段近くで見てもらえないオルガニストの演奏している姿や、岩倉まで物理的になかなか来られない人までもが「こんなオルガンがあるんだ」と新しく存在を知る機会になるし、それに「こんな作品がある」という発見まで与えられるのであれば、とても有意義なことだと思う。

でもやっぱり、個人的には直接お客さんに出会いたいと思うけども。