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吉田秀和さんの言葉

最近読んだもので、とても印象に残っている言葉がある。

前回書いたものは昨年私を元気づけた忘れたくない言葉であり、こちらは私の音楽との関わり方について、

「無視できない」というよりもっと強いと直感的に感じるものだ。

 

吉田秀和さんが1953年から1954年にかけてアメリカからヨーロッパへ旅をされた時のことを綴ったものをまとめた「音楽紀行」が中公文庫から出版されたのは1993年だ。

その中でブルーノ・ワルターが指揮するニューヨークフィルのモーツァルトの演奏を聴いた後に書かれたもの。

 

「こけの生えた古臭いものへの本当の尊敬と感嘆を思い知ったのは、ヨーロッパに渡って来てからだが・・・こういうとすぐ日本の人には、何だ古臭くなりやがったと云われそうだが、文明というものは、一面とても古臭いものであり、反対に、自然と野蛮は登場する時はいつも新鮮な顔をして現われてくる。しかし何年かしてみると、むしろまたその反対が本当で、自然と野蛮こそいつも同じ姿で古臭いまま残っていて、それを新しいものに組直してゆくものは、むしろ古くからずっとつづいている文明の力だということになる・・・・。」

 

 

旅行記とあるくらいなので、吉田さんが体験された(一つ一つがものすごい体験であるけれど)出来事に対する非常にフレッシュな感想が綴られていて、堅苦しくなく読める。

つまり、何か理論的なことを語られているわけではない文章の中に突如それは出てくるのだけど、ものすごく「ずしん」とくる。

前衛真っ只中に発せられた重みというのもあるが、その通りという気がとてもする。(少し反発したい気持ちがあっても)

忘れないようにここに残しておきたい。